コロナになった…その4「始まる、ホテル療養」

カタヨリ

不安だらけのホテル生活。

アパホテル

食事

オリエンテーションを終え一休みしていると館内放送が行われた。

・今から食事の時間になること

・食事は各フロア所定の場所に取りに行くこと

・食事を取ったら速やかに部屋に戻ること

・食事は1時間以内に取りに来ること

が放送された。

これから毎度、事あるごとに館内放送が行われることが容易に想像され

少しげんなりした。でもすぐに気を取り直しこう思う、

私は客ではない。

とは言えホテルスタッフの対応は丁寧で、一般客と変わらない対応を

してくれたと思う。

 

療養前、保健所とのやり取りでアレルギー等の聴き取りがあり

、甲殻類がダメな私は「アレルギー対応食」となった。

それはホテルスタッフに都度内線で「アレルギー対応食でのご提供ですので1階まで…」、

「今回はアレルギーの物入っておりませんので各階所定の…」と

連絡をする手間を作ってしまったが、毎度丁寧に対応してくれた。

それらを含め、現場スタッフには感謝しかない。

昼食

ここでの初めての昼食。

弁当にお茶。毎食こんな感じで提供される。

味は普通に美味しい…気がする。

ゴミは適宜、一階所定の場所に捨てに行くことになっている。

食事が済みしばらくすると館内放送が行われ、

スタッフによる弁当の回収作業が始める為、再度放送があるまでは

部屋から出るな、との事。

ホテルスタッフの感染リスクを少しでも下げる為、それは当然のことだと思う。

 

昼食を終え、ある程度ここでの生活の準備を済ませると

思い出したように疲れと怠さが出てきた。

カーテンを閉めると昼間でもそこそこ暗くなり、そのままベッドで眠った。

夕食、異変

パートナーからの電話で目を覚ます。

LINEのビデオ通話。便利な世の中になったなあ。

これがあったお陰で離れ離れの寂しさはあまり感じずに済んだ。

通話を終えると、夜間の担当看護師よりLINEがきた。

2回目の健康観察報告だ。

部屋番号、名前、体温、血中酸素飽和度、症状の有無、体調変化、

それらについて報告をする。

あとは注意事項、

・体調に著しい変化があればすぐに知らせること

・解熱剤等を服薬する際には相談すること

・部屋にチェーンロックはかけないこと

が伝えられた。

部屋はカードキーによってロックされているが、もし連絡が取れなくなった

場合、最悪スタッフが踏み込む可能性があるからだ。

改めてホテル療養にきたことを再認識した。

 

そうこうしてる間に夕食の準備を告げる放送が行われた。

間もなくして内線が鳴り、夕食はアレルギー対応食の為

配膳完了の放送後1階まで取りにくるよう指示される。

1階に降りるとフロント前にある長テーブルに部屋番号が書かれた

お弁当が置いてあった。また1階の奥には、ホテル療養者が自由に取っていい

ペットボトルの水や、替えのトイレットペーパー、ゴミ出しに必要なゴミ袋

等が用意されてあった。夜、水が欲しくなると思い、ついでに水を2本

持ち帰った。

 

部屋に帰り夕食を食べると違和感を覚える。味を感じない。

全てが⚪︎⚪︎そう…くらいにしか分からない。甘そう、辛そう。

確かに少し鼻詰まりはあるけどこれ以上酷い鼻詰まりも体験したことはある。

その時でさえ味わったことのない感覚。

辛さの刺激、ポン酢の舌にしみるような感覚は何となくわかる。

ただ何を食べても全く味や風味を感じなくなっていた。

夕食を終え持ってきていた少量のお菓子でも確認する。

好物のグミは、甘そうなグニャグニャした塊になっていた。

こうなると全く食べたいと思わなくなる。

インスタントコーヒーも持ち込んでいたがこれも同様だった。

 

夜が涼しくなってきている。窓を開けて外の風に触れると秋の到来を感じた。

でも匂いを感じない。

窓から見える、すぐ側を走る車や電車の音。するはずの排気ガスの匂いも、街の匂いも、

季節や天気で変化する風の匂いもわからない。

コーヒーの匂いがしてコーヒーが飲みたくなったり、変わらずに巡ってくる

風の匂いで、切ない記憶に呼び止められたり。

私は「きっかけ」を無くしてしまったらしい。

無くして初めて、嗅覚が人に与える影響の大きさに気付いた。

夜、感謝

入浴後、ひと通り寝支度を済ませ一息つく。

私は昭和ながらの、古い和室のような内装が苦手だ。

何故かは分からないけど幼少期から苦手だった。

なんとなく寂しいような、怖いような、帰りたい、そんな気持ちになった。

改めてこの部屋の狭さを感じるがモダンなデザインのお陰で

侘しさや物悲しさは感じなかった。デザイン、センスは大事だ。

ここは私の性に合っていた。

持ち帰った水を飲むと吹き出しそうになった。

小さい頃、親に連れられて乗った電車の窓から見えた看板。

失礼ながら、ケバケバしい決して美人とは言えないおばさんの笑顔は、

幼い私にでさえ強烈なインパクトを残した。その記憶が一瞬にして甦った。

デザイン、センスってやっぱり大事だ。

 

自分がコロナに感染し、またそれを誰かに感染させてしまっているかもしれない。

そんなことがフワフワ漂うこの部屋で、このデザインに少し救われた気がした。

こうしてお世話になってみると、公費が入っているとはいえよく手を挙げてくれたと思う。

他を比べようもないが、スタッフの対応や療養者の受け入れ準備は、良く出来ているように思う。

今度は客として来よう、そう思った。