死について考える小説「最後の医者は桜を見上げて君を想う」が名作!!


カタヨリ
死と向き合う、いつか誰もが通る道。
死。
生まれた時から決められた運命。みんないつかは死ぬ。
遅かれ早かれ。
そうわかっていても、私たちは明日に希望をもち、将来に夢を見、今日を使う。
そうして色んなことが起きて、喜怒哀楽を味わい、さまざまな経験をし、次第に慣れていく。
色んなことに慣れていく。
そしてある日突然、大切な何かを失うような、心を抉られるような出来事が起きる。
悲しいことはいつも何かをなくした時なんだよね。
ようやくそこで思い出す。噛み締める。
今を、今までを 、これからを。
今回はこちらの小説をご紹介!
このお話は3人の医者を軸に「死の在り方」をテーマに描かれた作品。
3人は学生時代からの友人。
3人の勤務先である武蔵野七十字病院の院長の息子で若くして副院長を務める、高い理想を追い求め、
手術の技術も一流、熱い熱血感の頼れるエリート医師、福原
俯瞰的に患者をみつめ、死を現実的に考え続ける医師、桐子。患者やその周りの人の気持ちに
配慮が欠けたその判断や言動は時に、あまりにも冷徹な印象を与えてしまい、「死神」の異名を持つ。
治療方針や価値観の違いにより、いつしか福原と桐子は相容れない存在に。
その二人に挟まれる、人くさくて、優しい、でも流されやすく、自分の在り方に迷う医師、音山
その3人を通して死について考える今作品。
まずとても読みやすい。
小難しい文章表現があまりないのでスラスラ入ってくる。
上記にあるように登場人物もはっきりしたキャラクターがあってわかりやすくてキャッチー。
あとは全体の構成力。
ドラマの脚本のような展開力もあって、次へ次へ、ページを読み進めてしまうパワーがあった!
医者や病院をテーマにした作品はドラマや映画、小説、数多くあるけど、
この作品はその多くで扱われている「人間関係」「勢力争い」「圧倒的なヒーロー像」
そういったことをテーマにしてない。
キャッチーにするためにドラマっぽい演出や展開が少しあるけど、
「死と向き合う」ということをテーマに描かれている。
なので特定の病気について、「その症状や、治療方法、患者がどういった経過を辿っていくのか、
どんな選択肢が残されているのか、その結果どういう結末を迎えるのか」、そういったことが
詳しく描かれ、その患者や家族の心理描写には胸を抉られるような、とても考えさせられる
内容だった。
何かにぶつかった時、いくら理屈で押さえ込もうとしても、私たちは心を持っている。
頭でっかちな解決は心を置き去りにしてしまうから、決意も、絞り出した答えも、揺らいでしまう。
でも心のままに決断することが、本当に良い結末にたどり着くのか。
その両極を福原と桐子が示してくれる。
そのどっちも間違いじゃないんだよね。
でも人は迷う。単純じゃない。
環境や境遇が違えばまた、捉え方も変わってくる。
そういったことを考えさせてくれるとっても良い作品でした。
こういったテーマが好きな方はぜひ読んでみてね!
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